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夢の坂 レビュー

夢の坂の登場人物(2)

右上から高橋美紀(緑髪)、小沢麻理恵(紫髪)、中原奈緒子(赤毛)

中央右から、吹雪氷雨(赤い眼のみ)、五代美也(緑髪のショート)、

右下から広瀬恭子(茶色ショート)、川崎有紀子(薄い茶色ロング)

 

 

吹雪氷雨(左)と香西冥夜(右)

 

引用はacute 「夢の坂」より。

acute 「夢の坂」のチラシ

 

acute ホームページより引用。

 

本ページの全ての画像は

acute様からよりの引用です。

 

夢の坂レビュー 目次

 

【1】概要

【2】インストールと起動方法

【3】リメイク版制作について(正式版ついに公開・サンプル掲載)

【4】主な登場人物

【5】あらすじ(のようなもの)

◎共通ルートのあらすじ

◎吹雪氷雨編のあらすじ

【6】どうしても起動できなかった人のために

 

 

 

【1】概要

1998年にacuteより販売されたアダルトゲーム。

出荷を前にして、メーカーが洪水の被害に遭い、結果として残ったデータを持って再編集されたため、不完全でインストールするのに工夫が要り、大概の人がインストールして起動できなかったらしく、「動かないゲーム」として、いわゆる「糞ゲー」として扱われることが多いが、注意すればインストールは難しくなく、かなり後のOSでもプレイは可能。

プレイできたユーザーからは「シナリオは良い」という評価が複数あり、ためしに編者もこれをプレイしてみた。噂通り、シナリオはかなり面白く、埋もれたままにするのは惜しく、再評価と後の作品作りに役立てるものがあればと思い、記録の意味で記述することにした(可能であればacuteが活動を停止しているようなので、著作権を譲られた、他メーカー・同人サークルによって音声つきで完全版のリメイクが出てくれたら、とは思う)。

 

ただ、ゲームとしては、前半がテキストのみを延々と読み続け(ビックプロローグ編)、後半(本編)から通常の「絵と音楽のついたノベルゲーム」としてできる、などシステム的、ゲーム的に問題が多い。

 

ジャンルとしては「伝奇」であるが、今日の「戦闘重視」、「スプラッタ重視」の伝奇ともベクトルが違う形のゲームであり(強いていえば、悲しみ、そこからの救済、そして人間再生)、伝奇ゲームの別の発展の可能性が存在したことを示すような作品としての面もあると思う(ある意味、バトルや直接的な流血などを用いず、キャラ萌えにもそう頼らずに純然たる伝奇・オカルト・謎解き要素と人間の内面描写だけでここまで書いているのはアダルトゲームとしては個人的に珍しいと思う。また過度な知識の羅列に頼らない部分も今時のゲームと比べると珍しい)。

ヒロインも(メインとなるはずの)吹雪氷雨を始めとして非常に魅力のある、精神年齢も実際の高校生(平均よりは上であるが)に合わせて適度に高く描写されている様が良い。

一応、本項目では起動方法、そしてプレイできないまま、手放さざる得なかった人のための「どんな話だったのか」を知るための「登場人物紹介」、「あらすじ」を書いておきたい。これから「何とかして入手してプレイしたい」という人は「登場人物紹介」「あらすじ」は自己判断で読むようにして欲しい。

 

【2】インストールと起動方法

 

(1)対応OS

OSに関してはWindows Vistaで起動可能。おそらくそれ以前のOSでも問題ないはず。Windows7でも動作を確認済み。

 

(2)インストールと起動方法

インストールを以下の手順で行うと良い。

   (a)CD自体をPC内にフォルダーを作って丸ごとコピーするのが良い。

    コピーせずともできるはずではあるが。

   (b)「設定」datファイルが存在するが(文字化けしている可能性あり、

                   文字化けしていなら、名称を「設定」にする)、「設定」datファイ

                    ルを編集し、「data」フォルダーの場所を正しい実際の存在場所に

                    書き直す。

     ゲーム用のCDを入れた状態で、ここからデータを読み取る場合、

     CDドライブがH:¥なら、設定.datの中身をH:¥data¥にする。

     余計な改行が入り

     H:¥data¥

     (ここに開業した分が入っている)

     のような状態だとと動かないので注意。

     通常はこれで動くはずだがこれでもなお動かない場合、以下の項目 

                    を実施してみる。

 

   (c)dataフォルダー内部には画像データがあるが、これのファイル名が文

                字化けしているデータがある場合、読み込めず起動できないことがあ

                るらしい。「bak」フォルダー内の画像データを丸ごと「data」フォ

                 ルダーコピーする(上書き・置き換えてよい)。

   (d)hsp34というゲーム用のOSのようなものを最新版のものをダウンロー

                ドする

            C:¥の直下にインストールするのが良い。

           (これは無料でダウンロードできる)これで起動はできる環境になった

              はずであり、yume.exeから起動する。

      ただし、midi関係の不具合からか、編者は最終ルートまで編者はクリ

               アできていない (ただし、最終ルート以外は全てクリアした)。

   ルートは攻略対象ヒロインごとに順に

     1)五代美也→

            2)中原奈緒子→

            3)小澤真理絵→

            4)川崎有紀子→

            5)広瀬恭子→

            6)吹雪氷雨→

            7)高橋美紀

 

の順で進むのだが、1)~6)まではWindows vistaでクリアできた。

7)高橋美紀に関しては終盤の終盤で強制終了となってしまった。midi関係らしい。

 

【3】 リメイク版制作について(正式版ついに公開・サンプル掲載)

 

リメイク版「夢の坂」が2015年12月23日、ついに公開された(正式な名称は「夢の坂(再編集版)」)アップロード先は「エロゲと饗」というフリーのアダルトゲームダウンロードサイトである。

 

サイト「エロゲと饗」のURL

http://elog.tokyo/

掲載されているページ

http://elog.tokyo/novel/game_109.html

 

また、ニコニコ動画上にフリー音楽素材から引用したエンディングテーマ曲とCGによる簡易的な動画が載せられている。

http://www.nicovideo.jp/watch/sm27747583

 

以下はリメイク版「夢の坂」の1シーン。喫茶店「もらとりあむ」で中原奈緒子、小澤麻里絵と再会するシーン。オリジナルの「夢の坂」ではテキストしか表示されなかった部分も通常のヴィジュアルノベルになっている。麻里絵の告白を冷たく拒絶した主人公「香西冥夜」に対して中原奈緒子(なおちゃん)は攻撃的だ。この後、喫茶店のマスター仙道刀夜の計らいもあって三人は距離を縮めていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【4】主な登場人物

 

香西冥夜(こうざいめいや)

 

主人公。学校の成績、容姿、スポーツ、腕力に秀で、女子からは羨望の目で見られている。しかし、母は彼を産むときに亡くなり(冥夜の名前はそこから来ている)、しかも有力な政治家の愛人で家庭環境には恵まれなかった(ただし、父は母と冥夜を深く愛してはいて、自身の姓である「香西」の姓を与え一族として扱い、遺産の分与も定めている)。不遇な家庭環境、母が愛人、自分は庶子として認知されているが日陰の身、そして、父が愛人として囲った女性が不幸になったこと、そして、幼少時に遭った「事件」(ある種の性的虐待)などから、女性(実は男性も)を遠ざける面がある。女性につらくあたるのは「相手を不幸にしたくない」、「自分が傷つけられたくない」という気持ち、幼少時にあった「事件」からだが、女性の振り方がかなりキツイ上に、振った人数が30人を越えていることから、広瀬恭子などから強く非難されることが多い。

母の姓は「羽坂(はさか)」であるが、その正しい綴りは「破坂(坂の怪異を破りし者)」であり、「夢の坂」(実は本当の綴りは「幽冥の坂」)に潜む魔物を一度は撃退した侍の子孫であった。彼は父親とは同居できないため、学生寮から学校に通っている。

 

吹雪氷雨(ふぶきひさめ)

 

ヒロインの一人(実質的にメイン)。同級生。冷たさのある神秘的な美貌と主人公に似た雰囲気を持ち、主人公以上に超然としていて、人を拒絶する空気がある。彼女もまた、冥夜と同じく不幸な出自であり、婚外子である。実は彼女は母が強姦されて身ごもった子であり、母は最終的に彼女を残して、自殺するなど環境は主人公より厳しく、超然とした態度もまた「自分を守るため」の壁であったが、心の奥で自分の出自を知りながらも、理解と救いを与え、受け入れてくれる存在を心待ちにしていた。同時に、不幸な境遇の上に自分を見捨てて苛めた「社会」や「世間」に復讐したいとも願っていた。彼女は人間ではあるが、「憑代(よりしろ)」、「力を束ねて一つの力にして増幅する」という能力を持っており、その超常の能力と復讐を願う心を見透かされて、「夢の坂」(実は本当の綴りは「幽冥の坂」)に潜み、この世への復讐を望む「悪霊」達と同調してしまい、付け込まれてしまう。結果として「復讐できる力」を手に入れた彼女は「怪異」を引き起こし始める。彼女は、自分と同じ苦しみを持ち、ある意味において分身とさえ言える冥夜と惹かれあい彼を仲間にしようとするが・・・。

実は彼女の父親は誰だったのか?は作品内の事実を繋ぎ合わせると見えてくる。彼女の魂を救うシーンは本作の最大の見せ場の一つ。

 

 

広瀬恭子(ひろせきょうこ)

 

ヒロインの一人。同級生。香西冥夜とは過去に「予想外の酷い事」を言われてから口喧嘩をしょっちゅうしている、ある種の喧嘩友達に近い関係。ただし、冥夜の言葉の裏にある思いやりの部分には気付いており、思いやりがありながら、女子生徒の告白を拒絶し続ける冥夜に興味を持ち、魅かれて密かに見守り続けていた。

長く彼を見守っていたためか、冥夜のことを良く理解しており、吹雪氷雨と魅かれ合う冥夜を「兄妹の様だった」「同病相哀れむ」と語り、さらに「その惹かれあい同じ病を持つ二人が戦う先に良い結果があるとは思えない」と続けるなど、鋭く見抜いた発言をしている。また、「生きることに執着がない」ことも見抜いており、氷雨と戦いの際には上記のことと合わせて危ういと見ていた。活動的、優等生的で学生寮の総代のようなことをしており、後輩からも好かれているが、学生寮の後輩の女子が冥夜に手ひどく振られて、泣きそうになっている時は後輩の側に立って厳しく咎めるようなことも多い。

 

川崎有紀子(かわさきゆきこ)

 

ヒロインの一人。同級生。同級生のヒロインの中ではもっとも精神年齢が高い。頭が良くおとなしく自然に淑やかで古風、しかし内に秘めた芯の強さと優しさがある。

学年での成績は冥夜とほぼ互角で首席を争うレベル。氷雨や恭子も成績は良いが、「私たちよりは少し下」と語っていた。ただし、エリート志向ではなく、「たかが勉強の良し悪し」で「大人に上下に振りけられるのが嫌でした」、「成績が良ければ負け惜しみと思われることなく、それをした(上下に振り分けた)大人達にいつか抗議できる」と語っている、独特のしかし、しっかりした価値観を持っている娘。

 自然な形で古風な面があり、ラブレターを主人公の下駄箱に入れて待ち合わせていたが、冥夜はいつも通りまともに読んでおらず、待ち合わせた場所に寒い中、夜から明け方まで待ち続けて結果として病気になり、それが恭子の耳に入って叱られて、さすがに罪悪感を感じた冥夜が見舞いに行くという形で面識を持った。

 頭が良いだけに冥夜と氷雨が魅かれあうことを「彼女もあなたと同じで傷つくのが嫌で本当の意味で戦わなかった人だから」と話している。また、恭子同様に「生きることに執着がない」ことに危機感を覚えていた。さらに、氷雨との決着の前に自分を訪ねたことを「生きて帰れないと予想してラブレターのことをもう一度ちゃんと謝りにきた」と悟り、「戦う前から諦めてどうするのです?」と詰る一幕もあった。彼女は氷雨との戦いの前ですべてのヒロインの中で一番有益なアドバイスを与えていた。

 昭和や20世紀までは「割と存在していた」だろう、さりげなく古いタイプの良い娘だが、かなり大胆な一面もあり、冥夜をあわてさせている。

 

高橋美紀(たかはしみき)

 

ヒロインの一人。主人公の担任の教師。生真面目な性格であるが、生徒である冥夜に女として魅かれつつも、教師として責任を持って面倒を見ようという気持ちの間で揺れ動く。実は彼女が勤務し、冥夜が通う学園は資産家や政治家など有力者の婚外子の預け先のような一面があり、それが故に多くの有力者とパイプを持つがための「名門校」であった。生徒の中には問題児ではないが、出自や家庭環境に問題がある不幸な子供が少なくなく、まだ教師としての経験が浅いことと、教師としての立場と母性を持った女性としての心間で苦悩することもあった。

特に冥夜が起こした些細な問題で、父が学園に介入してきたことを、今更父親らしい態度をしないで欲しい、と言わんばかりに父を責め立てたて、負い目がある冥夜の父が苦痛に満ちた沈黙をしてしまった時にも、とりなそうとしたが父子の問題だから口を挟まないで欲しいと言われてしまい、何も言えなくなってしまうような場面もあった。

女性としては背が高く、グラマーな肢体を持ち、顔立ちが整っていることから男子生徒の間で人気がある。

 

小澤麻理絵(おざわまりえ)

 

ヒロインの一人。主人公の後輩、二年生。大人しく、優しく思いやりがあり、周囲の人の気持ちを察することのできる娘。冒頭で主人公に告白をし、ラブレターを渡そうとしたが、受け取ることさえ拒絶されるという、手酷い振られ方をした。同伴していた中原奈緒子、途中から割って入った広瀬恭子らが冥夜を責めたが、結局は受け取ってもらえなかった。

しかし、不可解な理由、自分を悪者にして麻理絵を被害者のような立場と認める、「強く拒絶していながら、相手を傷つけたくない」という矛盾した冥夜の態度に複雑な事情を感じ取り、彼女に恭子と同じく深い興味を持たせるに至っている。振られながらも、「先輩を好きでい続けることは私の自由ですから」と語るなど、とても健気な心の持ち主。

後に喫茶店「もらとりあむ」で中原奈緒子とともに冥夜と再会するが、ここで年頃の女子らしく「恐い物見たさ」、「ミステリースポット探索」のようなイベントの話が出ていて、冥夜はこれに成り行きで参加することになっていまい、結果として物語は大きく動き始める。ある意味で、物語のきっかけを作った人。

 

中原奈緒子(なかはらなおこ)

 

ヒロインの一人。主人公の後輩、二年生。小澤真理絵の親友で同じバスケ部に所属している。真理絵と対照的に強気な性格、直情的。真理絵に付添として告白の現場に立ち会ったが、真剣な真理絵の告白を冷たく拒絶する冥夜に対して抗議し、食ってかかったが、結局のところ反論を理屈で勝る冥夜に折られ、ラブレターを受け取ってもらうこともできなかった。相手を強く拒絶しつつ、相手の尊厳を無下にせず、思いやりのある部分さえ示した冥夜を理解できず「何を言ってるのかわからない」「変な人」と相当に戸惑っていた。

喫茶店「もらとりあむ」で再会したとき、小澤真理絵と冥夜の縁が切れないよう、接近できるようにと、地元のミステリースポット「煩悩階段」の探索に冥夜を参加させようとする。本能的に不吉なものを感じた冥夜だったが、「先輩って意外に根性無しなんですね?」「臆病者ですね?」などと挑発し、冥夜は参加することになる。そこに現れた人魂は自然現象ではなく、本物の妖霊で、結果として「かつて坂に潜む妖魔を破った侍の子孫」が再び「夢の坂」に現れたことを周囲に潜む悪霊たちに感づかれることになる。最終的に、冥夜は悪霊とその憑代となった吹雪氷雨と命がけの戦いをしなければならなくなってしまった。菜緒子はこれを非常に後悔し、涙を流して詫びていた。

赤い髪、褐色の肌、すらりと伸びた足、強気な性格で他のヒロインより口調が荒っぽく、しかし脆い部分があるなど、独自の魅力がある。

なお、他のヒロインに明かしていなかった冥夜の過去の「事件」により、幼いころに童貞を喪失していたことを彼女にだけは少し話していた。

 

五代美也(ごだいみや)

 

ヒロインの一人。主人公の後輩、一年生。

攻略可能なヒロインとしては最年少。冥夜が女子寮に川崎有紀子を見舞いに来たときには、寝込んでいた有紀子の代わりに、お茶の準備を彼女が引き受けてくれていた。川崎有紀子とは面識があり、仲が良かったようだ。

可愛い妹タイプで、甘えん坊な面もある。

 

仙道刀夜(せんどうとうや)

 

冥夜行きつけの喫茶店「もらとりあむ」のマスター。

モデルのようなルックスと非常に優れた頭脳を持つ。身体も頑健。「夢の坂」「煩悩階段」の伝承に興味があり、喫茶店の3人のウェイトレスを通じて情報を集めていた。

頭脳明晰で弁が立ち、他者への共感力が著しく欠落した、サイコパス的な面を持って

いたらしいが、「それがどれだけ他人を傷つける」かを理解して、自力で自分自身を矯正していたらしい。そこからだろうが、人間自身への深い洞察、人が成長する過程において陥りやすい罠などについて、高い見識と理解を持ち、冥夜に対しては、「教師」、「兄貴」、「父」のような立ち位置で、冥夜を導くような面が見受けられ、冥夜自身も「彼からは多くのものを貰った」と慕っている。

川崎有紀子曰く「あの人は恐ろしい人」「しかし冥夜を見る目は父親のような優しい目つきで冥夜にとっては信用できる人」といった分析をしていた。

たやすく、もっともらしい「答え」に飛びつくことを戒め、結果的に正しくとも敢て反論

して深い洞察を得るように指導すること、他者の「言葉」で現状を指摘しても、それは「薄められた理解」であり、「自力で正解」にたどり着くことを非常に重視していた。

実は氷雨同様に超常の力を持ち、彼は「夢の坂」「煩悩階段」の怪異が本物で、伝えられている伝説が意図的に「ゆがめられている」ことも見抜き、坂の怪異に冥夜の通う学園の理事長の一族が絡んでいるであろうことを予測している。

さらに彼は、怪異が「夢の坂」でかつて滅ぼされ、殺された一族の怨霊によるものだけではなく、「さらに強い力を持つ「何か」が存在すること」で起きていることを見抜いていた。

 

実は、かつて販売された「モラトリアム」というゲームの主人公だったらしい。

彼と行動を共にするウェイトレスのイリス、レディーナ、ユリアンらも「モラトリアム」

からの出演らしい。PC98 モラトリアム で検索すると画像が見れるかもしれない。

 

福間(ふくま)

 

冥夜の寮における悪友にして漫研部の部長。実は彼も婚外子であり、とある資産家が愛人に産ませた子であった。漫画を介して2次元の世界に没頭するようにしていたのは、色々と鬱屈した感情や思いの発散のためであったが、性格は実は至って真面目で常識的な生徒である。

 婚外子でありながら、学業から喧嘩にまで秀で、超然とした雰囲気を持つ冥夜に憧れに似た感情をもっていた。同じく厳しい出自と同じような能力と雰囲気を持つ吹雪氷雨の存在にも注目していて、彼女の存在を話し、二人が近づくきっかけを作っている。

ダメ押しになったのは、彼の制作した同人誌だが、このエピソードは「腹がよじれる」ような笑える話であった(かなり笑える話なのでゲームをして実際に見て欲しい)。

のちに暴徒と化した生徒達に冥夜と共に立ち向かうが、彼はナイフで刺されてしまう。「中途半端な脇役はこれで退場さ・・・」と死を覚悟するが、助けに来たユリアンに「君はそれでいいの?」「人は皆、自分の人生の主人公なんだよ、男の子は特に。だから頑張って?」と諭され、手当てを受け一命を取り留めた。

 

御堂(みどう)

 

冥夜達が通う学校の理事長。現在の理事長は女性。江戸時代から続く地元の名士であり、彼女の学校は伝統のある名門・進学校であるが、それは代々学生寮に政治家、資産家などの有力者の表には出せない婚外子、庶子を積極的に預かることで有力者との強いパイプを築き、そして多額の寄付によって作られたものであった。

実は先祖が「夢の坂」のオリジナルの伝承に登場するのだが、一般に広まっている伝承には、「御堂」の名は出てきておらず、これを仙道刀夜は「昔からこの地に住む御堂の血筋の者達が時間をかけて歪めた形で伝承を伝えさせた」と考えていた。

オリジナルの夢の坂の伝承では、この一族は「呪術を扱い、報酬次第で呪殺も行う」とされており、坂を訪れた侍は休息のために民家に立ち寄ったが、「御堂さまの縁者か?仕事を依頼に来た方か?それならばおもてなしはできん」と言われるなど、相当に嫌われており、そうした過去の歴史を葬るために、伝承を変えて後世に伝わらないようにしたのだろうと刀夜は結論している。

また、実際に何等かの超常の力を先祖は持っていたらしいが(かなり遠方から依頼がくることもあったらしい)、周辺住民に被害を受ける者が出ていた「夢の坂」の魔物に対して住民のために対抗した侍、僧と比べ、何らのアクションも起こしていない等の不可思議な面がある。

それ以外にも、「風水的に見てこの「夢の坂」の一帯は凶事を招きやすいにも関わらず(実際に過去に起きていた)、学園は発展を遂げ、御堂の一族もバブルの崩壊を逆手に取り、資産を増やし、地元の人間には逆らい難い隠然たる力を持つまでになっている。不思議だ」などと、刀夜が語るように不可思議な点が現在でも多く、「何かの力」によって御堂の一族は守られ発展しているように刀夜は感じていたようだ。また、理事長の宿舎、居室は女子寮と同じ敷地内にある。

最終的に、一部の男子生徒が暴動を起こした際に事態の打開のため理事長と相談するために冥夜と刀夜が居室に入った際、居室には理事長はいなかった。しかし二人は部屋の中に隠し部屋があるのを発見、理事長の一族の「力」の源と学校を経営していた「裏の目的」、学校の悲しい闇の歴史等を示す「呪術的な施設」の存在を目の当たりにする。

呪術的儀式に用いるのに最適な女性・・若く、美しく、賢く、そして高貴な

血を引く女性を容易に得ることができるからである。

なお、吹雪氷雨の母親もまたこの学校の生徒であった。

 

【5】あらすじ(のようなもの)

 

本項では「夢の坂」の共通ルートのあらすじ(ビック・プロローグ編)と攻略ヒロインとして「吹雪氷雨」を選んだ場合のあらすじを載せる。

それと「このゲームが起動できるというのはデマではないか?」とも取れる発言がなされることがあるので、「吹雪氷雨」編のプレイ中のキャプチャー画像を少々載せた。

 

◎共通ルートのあらすじ

 

「夢の坂」とは主人公、香西冥夜が学生寮から学校へ向かうまでの間にある坂道。古い伝承によるとここには、かつて魔物が出没し怪異をもたらしという。しかし、それは旅の侍によって退治されたと伝えられている(別の口伝では僧侶が退治したのだともいう)。そして今は廃墟となっている寺が、退治された魔物の弔いのために建てられたという。

 

ちなみに寺に上がるまでの階段は、百八段あり、それは人間の「煩悩」の数であることから「煩悩階段」と呼ばれている。この「夢の坂」と「煩悩階段」は未だに怪異が時々起るとされていた。

 香西冥夜は、学園からの帰り道に二人の女子生徒に待ち伏せされていた。告白をするために待っていたのは小澤真理絵、付添いできていたのは中原奈緒子。いつものように冷たい態度を小沢真理恵に見せる冥夜だったが、真理絵の真剣な告白を無下にされて怒る中原菜緒子。そこへ同じく学生寮から学校に通う広瀬恭子がやって来て間に入り、冥夜を咎めるが、結局のところ冥夜はラブレターを受け取らずに終わる。

 香西冥夜は行きつけの喫茶店「もらとりあむ」に立ち寄り、一服する。そこで店主の仙道刀夜から三人のウェイトレスが「夢の坂」に関する資料を探していることを聞く。

 後日明らかになるが、夢の坂に関する伝承は何らかの事情により故意に歪められているという。オリジナルの伝承は以下のようなものだったという。

夢の坂を訪れた侍がいた。その目的は、この坂にある寺に居る僧侶を殺すため。理由は、この侍の師であり、僧侶の師でもあった人物を僧侶が殺したためだった。

僧侶は迎えの娘を寄越し、侍を僧侶の住まいへと案内する。しかし、「夢の坂」で妖しげな女と遭遇する。その女こそが、「夢の坂」に出没する「妖魔」だった。侍は力を得るため、僧侶の行う修行を行っていた。侍の刀の一撃は、魔物に手傷を負わせることができた。

侍と僧は協力して魔物を倒すことに成功する。しかし、侍は坂を去っていく。「魔物は倒したのになぜ?」と問う僧に侍は「「あれ」は倒した。しかし、終わりではない」と。「この地にはいずれまた別の魔物が出る」と侍は答えた。「ゆえに去る。ただし、いつの日にかこの坂に魔物が再び跳梁跋扈するときに、魔物を破った俺が「因」となり、この地に残った妖怪退治の話が「縁」となり魔物を倒す力となる」と。「この地は魔物を生み出す何かがあり、それは俺たちが力を合わせても消えない」ことを遠まわしに伝え侍は坂を去った。

この話は冥夜だけでなく、この喫茶店「もらとりあむ」に時々来ている広瀬恭子や、やはり利用していた小澤真理絵、中原奈緒子、五代美也らも知るところになった。

 ある日、冥夜は喫茶店「モラトリアム」を訪ねた。そこには小澤真理絵、中原菜緒子がいた。面倒なことになったと思いつつ、来てすぐ帰るのもと思い仙道刀夜と冥夜は会話する。その会話をチラチラとみる真理絵と菜緒子。彼らが冥夜と知り合いであると悟った刀夜の計らいで、会話に参加するように誘われる。

 会話の流れで、広瀬恭子、小澤真理絵、中原奈緒子、そして元気の良い1年生、五代美也らは一緒に「煩悩階段」を探索するのだという。「煩悩階段」は「魔物を退治した僧が魔物を供養するために建てた寺」へと上がる階段。そこには時折、鬼火や人魂の類が現れるという。「夢の坂」の伝説の由来を知った彼女たちは怖いもの見たさと、侍と僧に思いを馳せ、見てみたいのだという。

 冥夜は本能的に危険を感じ参加を見送ろうとしたが、中原菜緒子に挑発され参加することになってしまった。

 週末の2日間の夜、冥夜たちは「煩悩階段」を見張ってみることにした。1日目は何もなし、2日目に「それ」は現れた。熱さを感じぬ炎は明らかに物理的なプラズマやリンに引火した火炎ではなかった。そして、その夜が始まりだった・・・・。

 その日以来、何者かがじっと冥夜を見続けているような感触に冥夜は囚われるようになった。

 そんなどこか不安な落ち着かない日が続き、冥夜は下駄箱にラブレターが入ってるのを見つける。差出人は「川崎有紀子」からだったが、「煩悩階段」の事件以来、少し落ち着かない日常を送るようになっていた冥夜はあまり気にも留めていなかった。

 それから何日か後、冥夜は広瀬恭子に呼び止められる。彼女によるとラブレターを出した川崎有紀子が、断りの回答が来なかったため、待ち合わせの場所に来てくれると思ったらしく、待ち合わせ場所に夜から明け方まで待ち続け、途中で霧雨が降っても待ち続けていたため、病気になってしまったのだという。罪悪感を感じた冥夜は女子寮にいる川崎有紀子を訪ねた。途中、彼はある女子生徒に遭った。何度か書店と「もらとりあむ」で見かけた不思議な印象を受けた女子生徒、「吹雪氷雨」と。

 川崎の部屋を五代美也に案内されて訪ねた冥夜は彼女に謝罪し、見舞いのケーキを渡した。有紀子は気にしなくて良いと言い、茶は美也が用意して、三人はしばしの間歓談した。

 冥夜が良くモラトリアムを訪ねること、そこではあまり女子に冷たくしないことを知った女子たち・・・広瀬恭子、川崎有紀子、小澤真理絵、中原奈緒子、五代美也、そしてある事件で距離が縮んだ、吹雪氷雨・・・は「もらとりあむ」を訪ねるようになり、彼女たちとそれなりに和んだ日々を過ごしていたが、異変は引き続き少しづつ、起き続けていた。

 冥夜は知り合いの女子生徒が学校内で襲われ、あるいは冥夜を挑発する幻影を次々と連続で見た。

 冥夜はあまりにも生々しい幻影で連続して起きたため、刀夜に相談した。結果として冥夜の話したようなことは起きていなかった・・・が様子を見に行った刀夜は何か考え込んでいる様だった。彼も異変を感じ取っていたのだ。

 ある日、冥夜は刀夜からこんな話を聞いた。

 侍はこの「坂」には怪異を引き起こす要因があり、それにより「魔物」が出たと話した、と。そしてその原因と思しき事件がさらに昔あったのだと。この坂では戦国時代にある一族が、敵に追い詰められ滅ぼされたのだという。しかも一族のうち半分が残りの半分を滅ぼせば命を助けると唆され、二手に分かれて身内同士で殺し合あった。生き残った者も約束を反故にされ、結果として一族は全て根絶やしにされたのだと。

 侍の言う「魔物を生み出す何か」は、この地にて滅ぼされた一族の怨念を感じ取って話したのかもしれない、と。そして怨念は消えていない、と。

変異はさらに続いた。男子生徒の一部が暴徒と化して暴れだしたのだ。

暴徒と化した生徒たちは、金属バットやナイフで武装し暴徒と化していない生徒を襲い始めた。かろうじて担任の教師、「高橋美紀」を暴行される寸前に助け出した、冥夜。しかし協力してくれた悪友「福間」がナイフで刺されてしまう。助けにきた仙道刀夜とウェイトレスに「福間」の手当てを任せ、高橋先生とともに女子寮を目指す冥夜。セキュリティが確かなものだったため、女子寮の生徒はかろうじて無事だった。しかし時間の問題ではないか?と思いもしたが、「朝が来れば助けが来る」ということを支えに一同は待ち続けた。

しかし、異変に気が付いた。時計の針からすると、当然明るくなり始める時刻のところ、未だ暗闇なのだ。「夢の世界」というわけか、と刀夜がつぶやく。「夢の坂」は本来は「幽冥の坂」というのが真実らしかった。つまり「夢」のごとき「幽冥」の世界への入り口と。

既に世界は、坂の周りは「幽冥」の世界となっていたのだ。外部から助けは来ない。

 絶望に打ちひしがれる一同。刀夜は続ける。「これが「坂にいる魔物」の攻撃であることは分かっていると思う」そして最近になって動きが慌ただしくなった理由の一つは冥夜が「煩悩階段」で人魂と接触したからだという。冥夜の母の姓は「羽坂」。しかしその真の意味は「破坂」、坂の怪異を破りしもの、冥夜の母はかつて「夢の坂」で妖魔と戦った侍の子孫なのだと。侍を「因」として、口伝を「縁」として、再び「夢の坂」に現れた妖魔と戦うために冥夜は連れられてきたのだと。

驚く一同に刀夜はさらに続ける。「魔物が勢いづいたのは理由がさらに別にある。魔物に協力していると思しき人間がいる。その者がいなければ、こんなことは起こせなかった。その人物は・・・」と刀夜が言いかけたとき女の声がした。「私です」、と。声のした方向を見ると吹雪氷雨がいた。「皆さん、私が「坂」に協力しているんです。坂に居る「モノ」達に」。

刀夜や彼のウェイトレスたち、そして潜在的に冥夜も超常の力を持っているようだが、現時点では「自分達」の方がはるかに強い、と語る氷雨。ある目的を果たすために協力しているのだと。

なぜだ?と問う冥夜に「それは後で教えてあげます。私は香西さんと二人だけでお話しをしたい」と答える。「私は香西さんに私たちの仲間になって欲しい」とさらに続ける。冥夜たちが追及しようとするが、「お待ちしているので来てください。香西さんなら来ることができるはずです」と言い残し姿を消した。

 

◎吹雪氷雨編のあらすじ

 

共通ルート終了後に、どのヒロインを訪ねてから決戦へ向かうかを問われる。

以下に「吹雪氷雨」を選んだ場合の「あらすじ」を記載する。

 

 冥夜はしばし迷い、行くことを決めた。行く前に吹雪氷雨に関する生い立ちをウェイトレスの一人、「ユリアン」から聞いた。彼女は冥夜と同じような不幸な生まれであり、過酷さではずっと上なのだと。

 「ユリアン」との会話の中、彼は「力で勝る相手にどうすれば、敵対的な行動を止めさせるか?」この困難な試練を乗り越えるための「知恵」とも言ううべきものを授かりつつあった。人と人は傷つけあうような部分がどうしてもある。しかし、心に傷を負わされるようなことは刀夜からも言われたが、冥夜は彼と過ごすことを望んだ。それはなぜかと?そして、生きることに執着が無いことは問題だともユリアンは話した。最後まで頑張るにはそれが必要なのだと。

 そして吹雪氷雨は一見、冥夜よりもさらに超然として見えるが、それはなぜか?冥夜もそう見えるのだとも伝えた。なぜそう見えるのか?とも。二人とも基本的に同じ種類の人間だから。しかし、氷雨は女でより過酷な環境があった。心を開けば傷を負う。だから守るための壁がより厚いものになったのだと。「壁の向こう」にいる氷雨をどうすれば良いのか?

冥夜はユリアンの話す内容を全て理解できたわけではなかったが、心の奥底で理解できたような部分はあった。

「彼女をどうする?」と刀夜は訪ねた。「彼女だけでも救いたい。そうでなければ可哀そうだ」と。刀夜はこの回答に満足したのか、笑って見せた。

冥夜は刀夜の力によって、氷雨のいる場所へと向かった。

その「場所」には吹雪氷雨が待っていた。土中から光輝く巨大な「卵」のようなものが出ていた。

「待ってました、香西さん」と氷雨。

「この場所で、始まるとき・・・私は言われました。私が望む唯一の人、それを私はこの場所で得ることができると」

冥夜は訪ねる。

「誰に言われた?それになぜ「夢の坂」にいる「悪霊」に協力する?」と。

最初の問いに吹雪は

「誰でも良いではありませんか」と答えて、はぐらかした。

悪霊に力を貸す理由について吹雪は答えた。

「私にあって、あなたに無い物があります。それは「復讐心」です。」

氷雨は血の涙を流しながら語り始めた。

 

「私を苛めた皆。辛かっただけの世界。冷たいだけの大人。私を見捨てた・・全て」

「香西さん・・・香西さん・・・あなたは望みましたか?親に愛されない自分を?大人の言葉を鵜呑みにして汚らわしいものとして私を見る友達を?」

「吹雪ッ!」

自身の「生」に絶望した氷雨の言葉に、冥夜は叫んだ。なぜなら、その言葉は冥夜自身が嘆いていたことでもあったからだ。いや、氷雨に比べれば遥かにましだった。父の正妻は愛人の子である自分を疎み苛めたが、父は父なりに面倒を見てくれたのだから。

その上、彼女には冥夜が背負っていない重荷がさらにあった。

吹雪氷雨は彼女の母が強姦されて身ごもった子だった・・・。

人に罪を犯して復讐する権利はないと冥夜は答えるが、氷雨はこう答えた。

「・・・わたしには権利はありません。でもそれなら相手にも私の生まれを・・・私が十分悲しんでいる事を・・・わざわざ私にぶつけてイジめる権利があったのですか?」

「無い」、と答える冥夜。

「だから私も復讐します。理由はできるから。皆・・皆苦しめばいい」

しかし、それは自分を苛めた相手と同じレベルにまで落とす行為だ、してはいけないと冥夜は言う。「では、私に色々としてくれた人たちは誰が裁くのですか?」と、氷雨。

やられるだけやられて、何もできなかった自分は凄く惨めだった、と氷雨は言う。

「私は復讐する力を手に入れたが、なぜか貴方は彼らを守ろうとする。なぜですか?香西さんには私の方に来てほしい、それが私の望みです」と氷雨。

「聞こえるでしょう?同じように虐げられた人々の怨嗟の声。私やあなたと同じように理不尽な迫害を受けた人たちの悲鳴」

「君は間違っている」と冥夜は言った。

「皆間違っています。誰も正しくはありません。通るのは弱肉強食の力の論理。そして今まで弱者だったものが力を手にいれた。殺された人々の怒り、これは事実です。これはただの行為です。虐げられたものの抗議です。」氷雨はさらに続ける

「あなたの言いたいことは分かっています。相手と同レベルのことをすれば、相手と同じ。相手を批判する資格はない、でしょう?」こう話す氷雨へ冥夜は沈黙をもって肯定した。

「正しい指摘です。でも道徳では何も変わらない・・・道徳の言葉に力があれば、わたしだって・・・」さらに氷雨は続ける。

「私の母は相手も分からぬ状態でわたしを身ごもり、私を産みました。母にすら、それは分からない事だったのに私に何の落ち度があるんです?」

「同性なのに母を責めた人たち・・・まるで強姦者に襲われた方が悪いという意見のようです。隙があったのは悪いのかも「知れません」。でも何より悪いのは強姦をする人間でしょう?」

「・・そうだ」と冥夜は答えた。

「ではなぜ?なにゆえ母は責められ・笑われ・突き放され、命を絶ったのでしょう?母が何かしたのでしょうか?」

「そして私。私は産まれました。私は産まれて来たのがいけないようです。そうですね・・・母の負担にはなった・・・母の恥の象徴だった・・・そうなのでしょう」

「だから・・母は私を愛してくれませんでした。母は・・私を疎み・・・一人で死んでしまいした」。

氷雨の沈痛な言葉に冥夜は押し黙るしかなかった。

「でもどうして?どうしてそれを関係ない人に言われるのですか?あの娘は父親の解からない子供だと・・どうして言われなければいけないのです?そんな事は何よりわたしが一番気にしています。気にしてるんですッ!母に愛されなかった事も!わたしは・・誰より・・それが分かってたッ!」

「だから・・・皆、それを分かればいいんだわ・・・母と同じ立場になればいいの・・・わたしは・・そうするつもりです」

男子生徒が暴徒と化した一件が冥夜の中で、結びついた。「高橋美紀」先生は危うく彼らに犯されかけたのだ。

「・・・それで皆の欲望を加速させたのか?」

だが、冥夜は断言した。

「君がやろうとしていること。それは俺や君を沢山作りだすことだ。俺たちみたいな子供を」自分たちと同じ、という言葉を聞いて、氷雨が動揺する。

「考えられなかったのだろ?」

冥夜には分かっていた。怨霊に取りつかれ、氷雨の思考回路が彼らの「それ」になっている。よもや復讐とそれを正当化することしか考えられないのだ。冥夜は続ける。

「俺や君の苦しみを、「押し付けられる」必要も義務もない新しい命に押しつけ、呪いをかける事になるんだ」

「・・・・わたしだって・・・」と氷雨はうめいた。

「君の立場なら、俺も同じことを考えるかもしれない。でもそれをすれば連鎖は無限に連なる。君は被害者から加害者になるんだ」

「・・・加害者・・・」氷雨は呻いた。

冥夜には分かった。悪霊と思考が同調したまま氷雨が死ねば氷雨もまた「悪霊」や「怨霊」になる。だからこそ死なせてはならない、氷雨を。冥夜は続ける。

「死者の嘆きは正当かも「しれない」。だが、よもや彼らは許されない一線を越えた。もはや怒りは正当ではない」と。

「なぜ?」と氷雨が問い返す。

「簡単なことだ。復讐すべき相手は既になく、俺たちはその子孫でもない。とっくに死んだ、縁もない連中が恨みを俺たちにぶつけようとすることは、正当な怒りではない。ただの負け犬の怒りだ!」冥夜が言い終えたとき、氷雨は別人の声で叫んだ。

「黙れッ!!」と。

強烈な力の一撃を受けて冥夜は吹っ飛んだ。しかし、負けるわけにはいかなかった。

”生きるための執着”、生きて何かを成し遂げようとする心が必要な理由が冥夜にはわかった。

「彼らの運命は不当に厳しいものだったかもしれない。死ぬことを避ける選択肢がなかったのかもしれない。でもな、聞け!!」冥夜は氷雨の心に付け込み彼女を憑代にしている怨霊達に向かって叫んだ。

「お前らになんで俺たちが関わらなければならない!お前らは死者の分際で何の関係もない俺たちをなぜ巻き込む!」

「何をッ!!」再び氷雨が別人の声で叫び、痛みを伴う風のようなものを放った。しかし冥夜は耐えた。

「とっくに復讐する相手はいない。とっくに復讐する世界も時代も無い。お前たちの時代も世界もとっくに過ぎ去り、今ここにいる人間はお前たちと何の関係も無い!!」

いくつも痛みを伴う「何か」を体に受けたが、威力は落ちていた。

冥夜は確信した。悪霊達が力を吹雪氷雨を介して束ね、増幅している。しかし、氷雨は動揺して、上手く力を収束できなくなっている、と。

「このまま、自分の恨みを晴らすために、関係も罪もない人間に災いをなすなら君もこいつらと同じになる。恨みをぶつけるべきでない相手に恨みをぶつけ、自分が加害者になった自覚もないままに災いをもたらす存在になる。」

「香西さん!!」血をあちこちから流している冥夜を見て、氷雨は叫んだ。

「気にするな。俺や君が抱えている問題から比べたらたいしたことじゃない」

「で、でも」と氷雨は動揺している。

「重ければ死ぬだけだ。それより重要なのは・・吹雪・・・心の傷は死んでも消えないどころか死んでも縛られるということだ・・・その実例を君は誰よりも今、知っている。ここにいる悪霊どもだ。」

「ッ!!」

「このまま、こいつらと同じことをすれば君も悪霊になって救われなくなる。俺はそれをどうしても避けたい」

「・・・・・・・」氷雨は沈黙した。

「君はまだ生きている。そして時間がある。俺たちはやり直せる時間があるんだ」

「死ね!!」

再び、別人の声で氷雨は叫び、力を放つ。力の直撃を受けるが、倒れる訳にはいかなかった。ここで死んでしまったら、氷雨はさらに歪み、絶望する。だから死ねなかった。

戦いは続いた。冥夜は氷雨に向かって前進する。

 

そして、氷雨は冥夜の腕の中に居た。

氷雨は泣きながら言った。「なんで反撃しないんですか・・・」

冥夜は答える「これ以上、傷付けたくない。君のことが好きだから・・・・」

「・・・・う・・・・そ・・・」

氷雨は思い出していた。

この地に眠り、それゆえに土地に不可思議な現象を引き起こしていた「神」の如き存在が氷雨に向かって「君が望む唯一の人、それを君はこの場所で手に入れることができる」と予言したのを。予言は成就されつつあった。あとは過去の復讐を捨て、祝福された未来を選ぶことだけだった。氷雨は冥夜から差し出された手を握り返した。彼女は祝福された未来を選んだのだ。光輝く巨大な「卵」のような存在については刀夜が決着をつけた。「神」にはより完全に近い形で眠って頂くことにしたのだ。力が漏れ出さないように。

 

力を使い果たして気を失った氷雨をお姫様のように抱きかかえ、冥夜は日の光の差す世界へと降り立った。「幽冥の時間」は終わったのだった。

 

 

これが「夢の坂・吹雪氷雨編」の大まかな内容となる。

セリフは完全に同じではないし、短くするため順序も違っている部分もあるかもしれないが、ご容赦願いたい。

 

端折ったりしている部分も当然多いので、興味がある人は可能であればプレイしてほしい。

他のヒロインの物語も面白い(特に川崎有紀子、広瀬恭子)

 

これだけ読むとかなり「重苦しい話」のように見えると思う。確かにシリアスなゲームであるが、ギャグも多く詳細は伏せるが腹がよじれるようなギャグが結構あったりする。

 

この「氷雨と冥夜」の後日談も幸せ感あふれるものではあるが、「とんでもない未来の嫁」を引き受けてしまったというギャグめいた部分がある。詳細は省くが

 

周囲の視点では

「超能力バカップル・爆誕!!」

 

冥夜視点では

「悲報、俺氏絶対浮気不可能」

 

氷雨視点では

「私と冥夜君は、いつも一緒(はあと)」

 

のようなオチになっている(笑)

 

実質的にたった一人で学園を崩壊させかけた「超能力テロリスト」吹雪氷雨ちゃんを恋人にするのはとても大変な事だったのだ(笑)

 

しかし、この物語の闇はこれで終わったわけではない。

吹雪氷雨の攻略順序は最後から2番目。

 

そして物語の断片からうかがえる隠された真実がある。

それについては物語をじかにプレイしてその結果を見届けて欲しい。

 

【6】どうしても起動できなかった人のために

 

「夢の坂」を持っているけれども、どうしても起動できなかった人のために

変わった情報を一つ。

 

夢の坂はHSPというスクリプト(吉里吉里2のようなもの)でプログラムされ

ているようだ。つまり、このソフトはHSPで「コンパイル」して実行形式ファイルに変換している。このコンパイルを逆コンパイルすることでテキストファイルに変換できる(当然スクリプトの記述はあるが、それほど邪魔にならない)。

 

ソフト名「HSP逆コンパイラ ver1.20」で実施した結果、テキストの抽出に筆者は成功ている(これはフリーソフトなので無料)。

 

これによって出力されたテキストファイルを読めば、「夢の坂」のお話がどんなものであったかは、知ることができる。テキストが良いといわれる「夢の坂」をプレイできなくても、ぜひ読んでもらえたらとは思う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

煩悩階段で人魂と遭遇する主人公、広瀬恭子、中原奈緒子、小澤麻里絵、高橋先生。

これが始まりだった。リメイク版「夢の坂」より。

 御堂理事長の部屋に有ったものとは?「夢の坂」で起きている

怪現象の原因はひとつではない。真の黒幕はどこにいるのか?

同級生、川崎有紀子。彼女のシナリオは意表を突く超展開。しかし、「夢の坂」の怪現象の秘密と真実に迫る展開だ。
涙を流す中原奈緒子。
 
友人である麻里絵と主人公が距離を縮められるようにしていた奈緒子。しかし、彼女自身が冥夜に魅かれ始め、麻里絵もそれに気づいていた。

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